セミは長い間土の中で生活するのは周知のことと思います。
そして子孫を残すために地上に出て羽化をし、誰もが知る形のセミとなってパートナーを探します。
しかしその羽化は、とても危ういものであることはあまり知られていないのではないでしょうか。
そんなハラハラドキドキの羽化を調べてみました。
セミの羽化
まず、セミの羽化について少し述べたいと思います。
セミは、蝶のようにさなぎにはなりません。
さなぎになってから羽化をする状態を「完全変態」といい、さなぎにならず幼虫から直接成虫になるのを「不完全変態」といいます。
カマキリやトンボ、バッタもこの仲間です。
ですからセミは、土から出てきて適当な場所にたどり着いたら、そこから羽化が始まるのです。
大事な前足
セミの幼虫を思い出せる人はどのくらいいるでしょうか。
特徴を述べると、茶色の殻に覆われた体で、大きな2本の前足の先には爪がついているという、ちょっと不気味な姿をしています。
ですが、土の中でじっと樹液を吸って生きてきただけなので、戦闘能力は全くと言っていいほどありません。
大きな爪は狩りをするためではなく、土を掘り、木に登り、羽化を安定した状態で行うためだけにあるのです。
そして、幼虫はとてもデリケートです。
羽化をするために木を60㎝ほど登るのですが、その間に落ちてしまうとショックで絶命してしまうほどです。
そのため、その一歩を出すたびに命の危険があります。
それほど、この大きな2本の前足は大切なのです。
その前足が何らかの理由により片方でも折れてしまうと、もう安定した羽化は望めません。
もともと体力もないので、片方の爪で登ることは無理なのです。
そこで、そのセミの一生は終わることになるのです。
まとめ
道端で羽化できずにその一生を終えてしまったセミの幼虫を見ると、何ともはかない気持ちになります。
何年も土の中でじっと外に出られる日を待っていて、出たと思ったら簡単なことで爪が折れてしまい、命が尽きてしまうなんて。
神様は何でもう少し強い爪を授けてくれなかったのでしょう。
夏の大合唱を聞いていると、無事に成虫になれた一握りの精鋭たちなのだと、少し感動すら覚えます。